目次
1. 起源と基本概念
ミームは1976年に生物学者リチャード・ドーキンスが著書『利己的な遺伝子』で提唱した概念で、「文化的情報の伝達単位」を指します。遺伝子が生物の形質をコピーして広がるように、ミームは人々の思考や行動、習慣、言語などの文化要素を模倣・複製しながら伝播していきます。
あるアイデアや行動、情報の断片が人から人へと模倣され、少しずつ形を変えながら広がっていく現象が「ミーム」と呼ばれる所以です。
2. インターネットミームの特徴
インターネット上では、画像や動画、テキストの断片がユーザーによって切り取られ、キャプションを加えられたりリミックスされたりしながら急速に拡散します。こうしたデジタルコンテンツの形で共有されるミームは「インターネットミーム」または「ネットミーム」と呼ばれ、SNSや掲示板、チャットなどで目にする機会が増えています。
3. ミームの3つの要件
- 模倣可能性
ミームは他人に簡単にコピーされ、共有できる形であること。 - 改変・再創造性
オリジナルから派生しやすく、新たなバリエーションが生まれること。 - 拡散性
拡散によって共感や笑い、議論を呼び起こし、社会的な影響力を持つこと。
4. なぜ私たちはミームに惹かれるのか
ミームは短い時間で大量の情報を伝え、見る人に即座に共感や感情を引き出します。言葉だけでは伝えきれないニュアンスを一瞬で共有できるため、人々の注意を引きつけ、コミュニティ形成やブランドコミュニケーションにも多用されるようになりました。
有名なインターネットミームの例
日本発のミーム
- ボスケテ: 『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん』のワンシーンを元に、何かを必死に頼むニュアンスで画像付き投稿が広がったミーム。
- やる夫: 掲示板文化発祥のAA(アスキーアート)キャラクター。シンプルな顔文字で感情や日常シーンを表現する。
- コロンビア: 特定の状況(落胆や呆れなど)を表す顔文字やフレーズを、テキストや画像と組み合わせて使うスタイル。
- ダメージ計算: ゲームやアニメキャラが受けたダメージを数式で表現し、そのシュールさや共感性で拡散したフォーマット。
- 猫のミーム: 猫の決め顔やしぐさに吹き出しやキャプションを重ねてユーモラスに感情を伝える、定番のビジュアルミーム
ASCIIアート系ミーム
- orz: 土下座して肩を落とした人のシルエットを文字列で表現。失敗や落胆をコミカルに示す代表格のミーム
海外発の代表例
- Doge: シバ犬の写真に多彩な色付きComic Sansフォントでツッコミや感想を重ねたもの。
- Distracted Boyfriend: 3人の登場人物を写したストック写真にキャプションを当てはめ、気が散る様子を比喩的に表現。
- Success Kid: 親指を立てた赤ちゃんの写真で、達成感や小さな勝利を伝えるシンプルなミーム。
具体的な人気ネットミームの詳細
以下では、2024年末〜2025年上半期にSNSを席巻した代表的なミーム7種について、起源・フォーマット・拡散ポイントをまとめます。
トレンドミーム一覧
ミーム名 | 種類 | 主なプラットフォーム | 特徴 |
---|---|---|---|
きょういくばんぐみのテーマ | 音楽ミーム | TikTok | 子供向け教育番組風メロディに大人が歌詞を乗せる |
かわいいだけじゃだめですか? | テキスト | X / TikTok | アイドルの自虐発言を抜き出し、共感フレーズ化 |
格付けミーム | 画像 | X / Instagram | 「最強◯◯ランキング」形式でキャラやテーマを格付け |
猫ミーム(2024王者) | 動画 | TikTok | 猫映像+中毒性の高いTikTok音源の短尺ループ |
蓮池風磨構文 | テキスト | X | 発言の語尾を切り出し、汎用テンプレート化 |
まいたけダンス | ダンス動画 | TikTok | VTuberの振り付けを真似るチャレンジ企画 |
石破ミーム | 画像 | X / Instagram | 政治家の無言の表情を「深みキャッチコピー」と組み合わせ |
1. きょういくばんぐみのテーマ
- 起源:TikTokで子ども向け教育番組のようなシンセサイザー音源を「歌ってみた」形式で大人がパロディ
- フォーマット:15秒前後のショート動画+画面下部に歌詞テロップ
- 拡散ポイント:ノスタルジックな音色×大人の遊び心がマッチし、#きょういくばんぐみ で数百万再生を記録
2. かわいいだけじゃだめですか?
- 起源:ASOBI SYSTEMの新人アイドルがSNSに投稿した「かわいいだけじゃだめですか?」という一言が発端
- フォーマット:スクリーンショット風テキスト画像+リアクションGIF
- 拡散ポイント:自虐と肯定が同居するフレーズが幅広い層の共感を呼び、日常の様々な場面で引用されるように
3. 格付けミーム
- 内容:「最強女子大ランキング」「ヤバい上司格付け」など、画像にキャラクターやテーマをランキング形式で配置
- フォーマット:縦長カルーセル画像 or 静止画+テキスト
- 拡散ポイント:ユーザー自身が“自分ならではの格付け”を投稿しやすく、UGC量が急増
4. 猫ミーム(2024王者)
- 特徴:猫の愛らしい瞬間映像に、TikTok定番の「中毒性サウンド」を合わせた短尺動画
- フォーマット:10秒前後のループ動画+画面端に効果音エフェクト
- 拡散ポイント:何度も見返したくなる中毒性、総再生数は億回規模に達し、企業広告でも応用
5. 蓮池風磨構文
- 起源:オーディション中に蓮池風磨氏が漏らした「歌詞はね、いれとかなきゃとかないと」が定型文として拡散
- フォーマット:発言切り取り+“~とかないと”の語尾構造を別シーンに当てはめ
- 拡散ポイント:ほんのり抜けた言い回しが面白く、テンプレート化しやすい
6. まいたけダンス
- 出所:VTuberホロライブ所属の舞さんが配信中に披露したオリジナル振り付け
- フォーマット:TikTokで#まいたけダンス のチャレンジ動画として多数投稿
- 拡散ポイント:振り付けがキャッチーで真似しやすく、公式カバー動画もバイラル化
7. 石破ミーム
- 本質:政治家・石破茂氏が国会審議中に見せた無言の深い表情を切り取り、「無言の深み」「思いついたときの顔」などのキャッチコピーを添付
- フォーマット:静止画+短文キャプション
- 拡散ポイント:真面目なニュースシーンにユーモアを持ち込み、政界話題もミーム化
これらのミームはいずれも「模倣可能」「改変しやすい」「共感を呼ぶ」というインターネットミームの要件を満たし、短期間で拡散を加速させました。次は海外発の最新動画ミームや、音声フォーマットの動向にも注目です。