🇬🇧 トラスショックとは、2022年にイギリスで発生した財政政策による金融市場の混乱を指します。以下のような経緯で起こりました:
📉 発端:リズ・トラス政権の「ミニ・バジェット」
- 当時の首相リズ・トラスが約450億ポンド規模の大幅減税策を発表
- 減税の財源が不透明で「財源なき減税」と批判される
- 政策発表直後、ポンド急落・英国債利回り急騰・株価下落の「トリプル安」が発生
💥 市場の反応と影響
- 英国の年金基金がLDI(負債主導型投資)戦略で国債を活用していたため、金利急騰で**証拠金不足(マージンコール)**が発生
- 年金基金が国債を大量売却 → 金利さらに上昇 → 悪循環に突入
- イングランド銀行が緊急介入し、長期国債を買い入れて市場を安定化
🧩 なぜ市場が過敏に反応したのか?
- 英国は経常収支が慢性的に赤字で、国債の約半分を海外投資家が保有
- 政策への信頼が揺らぎ、海外からの資金流出が加速
- トラス政権は減税策の大部分を撤回し、首相はわずか44日で辞任
🇯🇵 日本への影響と懸念
- 日本でも「トラスショック」のような事態が起こる可能性が議論されている
- 日本は巨額の債務を抱えるが、国債の大半は国内で保有されており、構造は異なる
- ただし、円安や長期金利の急騰を通じた市場の混乱リスクは存在する
日本でトラスショックのような金融危機は起こり得ますか?
🌀 可能性はゼロではありませんが、構造的な違いが鍵です。
日本でも「トラスショック」のような金融危機が起こるリスクは議論されていますが、英国と日本では経済・金融の構造が大きく異なるため、同じ形での危機は起こりにくいとされています。ただし、別のルートで市場の混乱が生じる可能性は十分にあると専門家は警鐘を鳴らしています。
🔍 日本と英国の違い
比較項目 | 英国 | 日本 |
---|---|---|
経常収支 | 慢性的な赤字 | 黒字基調 |
国債保有者 | 約半分が海外投資家 | 約9割が国内投資家 |
中央銀行の独立性 | 高く、政府と対立しやすい | 協調的で政府債務を支える構造 |
通貨の地位 | かつての基軸通貨、現在は脆弱 | 安定した信用通貨(円) |
⚠️ 日本で懸念されるリスク
- 長期金利の急騰:日銀の国債買い入れ減額やマイナス金利解除により、超長期債の利回りが急上昇する場面が増加
- 円安によるインフレ輸入:財政拡張と金融緩和が続けば、円の信認が揺らぎ、輸入物価高騰を招く可能性
- 海外投資家の影響力増加:日本国債市場における海外勢のプレゼンスが高まり、売り圧力の着火点になる懸念
🧠 専門家の見解
- 「英国ほど急性的な動きは考えにくいが、対岸の火事とは言い切れない」—みずほ銀行 唐鎌大輔氏
- 「日本は成熟した債権国だが、その強みに頼りすぎると円の信認に跳ね返る」—第一生命経済研究所
つまり、日本では英国のような「国債暴落→年金基金危機→首相辞任」という連鎖は起こりにくいものの、円安や長期金利上昇を通じた“形を変えたトラスショック”が起こる可能性はあるということです。